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2023.06.16
PTA
令和5年度 PTA講演会

日時:令和5年6月8日(木) 14:10~15:20
場所:済美平成中等教育学校(四門館)

[講師 宮津 航一氏の御紹介]
 2007年、慈恵病院(熊本市)が始めた親が育てられない子どもを預かる「こうのとりのゆりかご」の運用初日に預けられる(当時3歳)。同年、里親の宮津ご夫妻のもとへ。2020年に養子縁組を行い、2022年、その生立ちを公表。
現在、熊本県立大学総合管理学部在学(2年生)。学業の傍ら、「ふるさと元気子ども食堂」代表や大学学生団体部長を務めるなど活躍は多岐にわたる。

[講演内容]
 冒頭、これまでのご経歴を紹介されました。3歳で「こうのとりのゆりかご」 に預けられた際は名前も生年月日も分からず、その頃に着衣していた服と「こうのとりのゆりかご」の扉に描かれた絵だけが幼い自身に残された記憶だった、とお話しされます。その後、宮津家の子どもとして愛情を注がれて育った様子を、多くの写真を用いながらユーモアたっぷりにご説明頂きました。
 そして、「こうのとりのゆりかご」に関する説明に続きます。2007年の開設以降170名の子どもが預けられ、その子どもたちは乳児院、児童養護施設、里親など、様々な環境に身を置くことになるが、自身の経験を通じ、やはり家庭に近い環境で育つことが重要だと感じる、との考えを伺います。
 ご自身の話に戻ります。小学2年生の時に、生後5ヶ月で実母が交通事故で亡くなったこと、写真を通じて実母の顔を見ることが出来たことなど、自身の出自を認知できた事がうれしかった。他方、「こうのとりのゆりかご」には、出自が全く分からない子どもも多くいる。アイデンティティーを構築するヒントとして、出自に繋がる情報を少しでも残しておいて欲しい、とお伝えされました。
 次に、現在代表を務められる子ども食堂についてのお話に続きます。全国に7,331カ所、愛媛県にも93カ所があるものの、あまり身近な存在になっていない現状とのこと。子ども食堂を始めたきっかけは、宮津ご夫妻が取り組むボランティア活動が身近にあったこと、コロナ禍で人との繋がりが希薄になったこと、福岡県で起きた男児の餓死事件に衝撃を受けたこと。大学受験直前の高校3年生で子ども食堂を開設することに周囲から色々な意見もあったが、振り返ると、高校生だったから出来たのだろうと思うし、実行して良かったと感じている。現在は60名程度の子ども達がやってきており、ボランティアと共に「お腹を満たし、心を満たす居場所」を提供し続けたい、と熱い想いを語られました。
 その後、昨年、生立ちを公表された背景についてご説明されました。「こうのとりのゆりかご」に預けられた後の行方が不明な子どももいるが、生立ちを公表することでそのような子ども達に当事者としてメッセージを届けたい。加えて、預けられた子ども達の幸せの実現に向けて社会が主体的に関わっていくための一助になりたい、との願いをお伝えされます。
 最後に、済美平成の生徒に向けたメッセージに移ります。まずは、教科書に載っている「学び」を大切にしつつ、社会との繋がりや経験を通じた「学び」も大切にしてほしいこと。次に、子ども食堂を例に、若い皆さんの行動には周囲を巻き込むパワーや無限の可能性があるということ。そして、学校生活や地域社会との交わりを通じて「他者の幸せのために生きること」を実践してほしい、とお話され、最後に、ご自身の好きな「置かれた場所で咲きなさい」という言葉を紹介されました。自分は何故ここに居るのか、自分の使命は何かを考え抜き、自分の花を咲かせ、いつしか、周りの人の花も一緒に咲かせることができるように頑張っていって下さい、とエールを送られ、万雷の拍手と共に講演は終了しました。

 その後の質疑応答でも活発な意見交換がなされました。以下、印象に残った内容です。

Q)預けられた子どもが真っ直ぐに育つためには?
A)自己肯定感を与えてあげること

Q)10代の自分たち(生徒たち)にとって大切なものは?
A)自分の可能性を信じること。強みを伸ばすこと

Q)他人のために生きる人を増やすには?
A)他人を思いやれないほど忙しくしてはいけない

Q)家族の定義とは何か?
A)最後まで味方でいられること

 いまを、これからをどのように生きるかについて懸命に模索されてきた経験から紡ぎ出されたお話を伺い、生徒も保護者も感銘を受けたのではないでしょうか。
 子どもたちには、学業を超えた先に大切な何かがあり、その何かを大切にしながら他者のために真摯に生きて欲しいと願い、親として、その子どもたちの味方であり続けられているかを自問させられる講演でした。

 お足元の悪い中、ご来校、ご講演いただき、どうもありがとうございました。

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